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_ギュウ_
犬塚が、突然堂城に抱きつく。
「…誠也君!?」
「!?」
突然、抱きついてきた犬塚を引き離そうとするが…
「…誠也君。私…」
そこに居るのは、雫丘出版編集長犬塚梨々花ではなく元カノ犬塚梨々花だった。
でも、堂城は、犬塚の言葉を最後まで全部聞かずに彼女を強引に引き離す。
「…ごめん。君とは付き合えない」
「…やっぱりまだ…」
犬塚が堂城から離れ、そのまま彼に背を向ける。
「…梨々花」
「…誠也君。久しぶりに名前で呼んでくれたね? 10年ぶりかな?」
堂城に背を向けてまま、顔だけ彼の方を振り返る。
「…おぉおお俺…」
「私、樹利亜ちゃんが少し羨ましいな? 誠也君にこんなにも愛して貰えて。誠也君? 付き合ってる頃、一度でも私との結婚考えた事ある?」
「…」
確かに、付き合って居た時は、毎日が楽しかった。
けれど、結婚したいとは思わなかった。
だから、梨々花とは、自然消滅したんだと思う。
「…ないよね? もしあったならあの日、何も言わずに私の前から消えたりしないよね?」
「…梨々花」
堂城に渡すはずのお見合い写真が入った茶色封筒を持って部屋から出て行く犬塚。
そんな犬塚を俺は、慌てて呼び止めた。
「梨々花…俺…」
「ごめんね? 誕生日を祝う相手が樹利亜ちゃんじゃあなくて」
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