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「あの? 七瀬樹利亜さんでしょうか?」
泉石渚と待ち合わせをしている裏路木の居酒屋で、彼を待つ間、ビールを何杯か飲んで、ほろ酔い気分になっていると、いつの間にか到着していたのか遠慮がちにスーツ姿の渚が自分に声を掛けてきた。
樹利亜は、手に持っていた酒をテーブルに置き、男性の方を振り向く。
「そうですけど? 貴方は?」
「初めまして、泉石渚と言います。えっと…」
渚は、樹利亜の正面のテーブルに腰を下ろす。
「樹利亜でいいよ?」
「えっと…それは…」
樹利亜からの提案に、渚は困った表情を見せる。
渚のそんな様子に樹利亜は、彼に自分の顔を近づける。
「渚君って、いま何歳?」
「…22です」
「22! まさかの年下! 店員さん!」
「ちょっと待って下さい!」
酒を追加しようとした樹利亜を渚が慌てて引き留める。
「あぁ! 君も飲む?」
「大丈夫です! あぁ! じゃあなくて、樹利亜さん大丈夫ですか?」
「えっ?」
どうして彼が、そんな事を言ってくるのか分からず、注文を取りに来た店員も…
「あの? お客様?」
どうすればいいのか分からず困惑していると、渚がその場に立ち上がり、
「すみません。お水貰っていいですか?」
渚の注文を聞き店員の女性は、厨房に下がっていった。
「渚君! 私、酔ってなんかないよ?」
「そうですか! だったら…」
渚がいきなり、樹利亜に顔を近づけてきた。
「ななななぎさくん!?」
だか、渚の視線は、すぐさま樹利亜が、カバンに付けていたバックチャームに移った。
「…樹利亜さん。このバックチャーム可愛いですね? ご自分で買ったんですか?」
これは…大学時代に、堂城君から私が、リナリアの花が好きだと話したら、私の誕生に誕生日プレゼントとしてくれた。本当はネックレスだった。
けれど、私が嬉し過ぎて毎日のようにつけていたらフックが切れてチャームだけになってしまったのでバックチャームリメイクした。
「ううん。友達に貰ったの? 私が、リナリアの花が好きって話したら、友人が誕生日プレゼントにくれたの?」
「そうなんですか? 樹利亜さんは、リナリアの花言葉を知っていますか?」
リナリアの花言葉、そんなの教えて貰わなくても…
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