片花想い

2/6
前へ
/158ページ
次へ
「あの? 七瀬樹利亜さんでしょうか?」  泉石渚と待ち合わせをしている裏路木の居酒屋で、彼を待つ間、ビールを何杯か飲んで、ほろ酔い気分になっていると、いつの間にか到着していたのか遠慮がちにスーツ姿の渚が自分に声を掛けてきた。  樹利亜は、手に持っていた酒をテーブルに置き、男性の方を振り向く。 「そうですけど? 貴方は?」 「初めまして、泉石渚と言います。えっと…」  渚は、樹利亜の正面のテーブルに腰を下ろす。 「樹利亜でいいよ?」 「えっと…それは…」  樹利亜からの提案に、渚は困った表情を見せる。  渚のそんな様子に樹利亜は、彼に自分の顔を近づける。 「渚君って、いま何歳?」 「…22です」 「22!  まさかの年下!  店員さん!」 「ちょっと待って下さい!」  酒を追加しようとした樹利亜を渚が慌てて引き留める。 「あぁ! 君も飲む?」 「大丈夫です! あぁ! じゃあなくて、樹利亜さん大丈夫ですか?」  「えっ?」  どうして彼が、そんな事を言ってくるのか分からず、注文を取りに来た店員も… 「あの? お客様?」  どうすればいいのか分からず困惑していると、渚がその場に立ち上がり、 「すみません。お水貰っていいですか?」  渚の注文を聞き店員の女性は、厨房に下がっていった。 「渚君! 私、酔ってなんかないよ?」 「そうですか! だったら…」  渚がいきなり、樹利亜に顔を近づけてきた。 「ななななぎさくん!?」  だか、渚の視線は、すぐさま樹利亜が、カバンに付けていたバックチャームに移った。 「…樹利亜さん。このバックチャーム可愛いですね? ご自分で買ったんですか?」   これは…大学時代に、堂城君から私が、リナリアの花が好きだと話したら、私の誕生に誕生日プレゼントとしてくれた。本当はネックレスだった。  けれど、私が嬉し過ぎて毎日のようにつけていたらフックが切れてチャームだけになってしまったのでバックチャームリメイクした。 「ううん。友達に貰ったの? 私が、リナリアの花が好きって話したら、友人が誕生日プレゼントにくれたの?」 「そうなんですか? 樹利亜さんは、リナリアの花言葉を知っていますか?」  リナリアの花言葉、そんなの教えて貰わなくても… ★    
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加