最終章:最愛結婚

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「行かなくていいの?」 「…あいつにはもう守るべき人も守るべき居場所もある」 「でも…」 「美緒。僕は、もうあいつ金輪際会うつもりはないよ? これからずっと」 「渚君…本当にそれでいいの? 渚君にとって昴君は親友なんでしょ?」 「親友だよ?  一番なのねぇ」 「だったら…」 「…美緒、昴は、君と再会するまでの6年間、僕の心の隙間を時には強引に殴ってまでも埋めてくれた。だからこそ、今あいつに会ってしまったら、俺は、きっとまたあいつを頼ってしまう。あいつに甘えてしまう」 「頼っちゃダメなの? 甘えちゃいけないの?」 「…俺と昴じゃあ生きる世界が違う。あいつに暗い世界は似合わない。あいつは明るい世界で何かも忘れて最愛の女性と幸せになって欲しい」 「…」 きっと渚だって昴君に本当は会いたいはず。でも… 「…渚君。一つだけいい?」 「なに?」 「昴君は、きっとどんな形でも渚君に会いたいはず。でも、渚君は金輪際昴君会わないって決めた。だけどやっぱり昴君にはお別れを言うべきだよ? 二人は親友同士なんだから」 「…そうだね? 美緒?」 「なに?」 「この手紙を自分の代わりに昴に届けてくれない?」  昴に、永遠の別れを告げたあの日以前に書いて、あいつの結婚式後に投函するはずだった半分嘘が混ざっている別れの手紙をコートの内ポケットから取り出し美緒に渡した。  案の定、手紙を受け取った美緒は、首を傾げた。 「えっと…」  渚は、複雑な表情をする美緒に対して真剣な顔で…。  でも、美緒は、気づけかなかったが渚の口元は、少し笑っていた。 「美緒。なに固まってるの?」 「渚君…これ、本当に昴君あげるの? 今日結婚式だよ」 「大丈夫。それにここだけのはなし、学生時代に遊びで二人で渡しあったやつだから。あいつにとったら最高のプレゼントだろ?」 「渚君が、そこまで言うなら渡してくるけど本当にこれでいいの?」  最後の別れの手紙が遊びで書いたラブレターでいいのか美緒は再度尋ねる。  だか…彼は真剣そのものだった。 「…これでいいんだ。いやぁ、これじゃあなくちゃダメなんだ!」 「…わかった。じゃあ、行ってくるね? 式場は、ここであってる?」  美緒は、渚に、昴の結婚式場がここなのか、スマホ上に式場のサイトのトップ画面を表示する。 「あってるよ」 「じゃあ、行ってるね?」 「気をつけてね? あぁ! ちょっと待って」  渚から受け取った昴へのラブレターをバックに入れ、式場に向かおうとした美緒に一枚の写真を手渡す。 「この人は?」  渚から手渡された写真には、眼鏡を掛けた渚より少し背が高い、黒髪で、いかにも優しそう青年が写っていた。服装は、黒のタキシード。 「名前は、西條侑李(さいじょうゆうり)。俺が、探偵になる前に働いていた会社の同僚」 「そうなんだ。えっ? ちょっと待ってなんでこの西條さんって人が今出てくるの? 関係ないよねぇ?」  美緒は、写真を見ながら、渚に質問をする。 「それが関係あるんだよ! いま昴が結婚式を挙げている式場、そこに、西條が式場スタッフとして転職してたんだ」 「えっ! えっええええええ」  その衝撃な事実に美緒は驚く。  そんな美緒に、渚は、改めて… 「だから、西條にその手紙を渡して欲しいだ」 「解った。受付で西條さんを呼び出して貰うね? じゃあ行ってくるね?」 「うん」  美緒の姿が見えなくなるまで手を振り続けると、スマートフォンを取り出し、ある人物に電話を掛けた。 「もしもし」 『……本当にこれでいいのか?』  電話の相手はすぐ出た。 「これでいいです。俺は、それだけのことをカノ……いやぁ? 自分の目的の為だけに、美緒どころかたった一人の相棒まで傷つけた。そんな人間は、傍にいない方がいいんです」 {……泉石}  電話の相手は、そんな渚の言葉に彼の名前の小さく呟く。 「でも……俺が自首したって知ったら、美緒……そして、昴は、自分を責めると思うのであの二人には、自分が自首した事は絶対言わないで下さい」 {解った。約束する。但し、一つ条件がある} 「条件?」 {……必ず生きて帰ってこい! 死んだら許さないからなぁ!} 「……はい」  ★
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