裏切りのキス 

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『…やっぱり一目惚れだったんですか? 堂城誠也さんに?』 『えっ!』  堂城誠也の事を訊かれて、樹利亜は手に持った追加したばっかりのコップをテーブルに落としそうになった。 『樹利亜さん!? 大丈夫ですか?』  渚が、落ちる寸前でコップを受け止めてくれた。 『ありがとう』  樹利亜に、コップを渡すと渚は再度尋ねる。 『樹利亜さんは、いまでも好きなんですか? 堂城さんのこと?』 『ゴホゴホ。渚君! 変な事言わないだよ?』  ゴホゴホと咳が出る。そんな樹利亜の背中を渚が優しくさする。 『えっ? 樹利亜さんは、彼に会いたいんですよね?』  渚は、樹利亜から渡された柿谷霧矢からの手紙を、彼女の前に差し出す。 『…はい』 『樹利亜さん。貴方にこの手紙を送った柿谷霧矢は、僕の直属の上司です』   半分本当で半分嘘の話を樹利亜に振る。  けれど、樹利亜を信じさせるのにはそれだけでよかった。  だってその証拠に… 『渚君!? 堂城君は、いまどこに居るんですか? 教えて下さい!』  渚は、いま、樹利亜によって押し倒されている。 『…樹利亜さん! 僕は、また襲われているんでしょうか? それとも、このままキスでもした方がいいですか? 僕は、別に構いませんけど…』  冗談っ気に、樹利亜の唇を指でなぞる。 『!? ごめんなさい』 『あぁはは。冗談ですよ? でも、そろそろお開きにしましょうか?』 『えっ! まだ、何もきいてないです』  起き上がって、飲み残しのビールを手に取りながら、渚に迫る。  そんな樹利亜に、渚は、自分のスマホを差し出す。 『樹利亜さん! アドレス交換しませんか?』 『アドレスですか!』  突然の提案に驚く。  だって、彼とは、今日初めて会ったばっかり。  それに、自分のアドレス帳には家族と会社以外、個人的に登録している異性は、堂城君しかいない。  6年経っているからもしかしたら、変わってるかもしれないけど、消さずに残してある。 『…駄目でしょうか?』  涙目で、捨てられて子犬みたいね目で、樹利亜の顔を見つめる。 『いいですよ?』  堂城君と会えるなら、私は、どんな手でも使ってやる。 『ありがとうございます』 ★★
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