独立宣言

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ

独立宣言

「ハッター家当主、センテン・ハッターは流刑地アシマ島にて建国を宣言する!」  両腕を縛られたまま台に立つ青年の勇ましい声が古風な議場に響き渡る。暫しのどよめきの後、最奥に構える初老の男が口を開いた。 「ハッター侯爵……いや、罪人ハッターよ。其の方は先の内戦で旧皇帝の側に付き、我々革命派を散々苦しめた。それを承知の上での発言か」  議場を囲む厳つい男たちから、そうだそうだ、何様のつもりだと野次が飛ぶ。しかし、初老の男が咳払いをするとたちまち場は静まり返った。  男は初代新皇帝である。大陸がテッケイ帝国により統一され、身分制度が撤廃されて久しくなった頃、彼を盟主とした革命派による内乱が勃発した。彼らは力による搾取を信条とし、平民の地位向上による奴隷の供給断絶に不満を抱いていた。かくして旧皇帝は討ち取られ、彼が皇帝の座に就いたのである。 「敗戦の将が我々を呼び付けて何を言い出すかと思えば……。しかしその威勢には感服したぞ。今後も我が新テッケイ帝国の流刑地としての役割を果たすのならば、建国を承認しよう」  議場は再びどよめきに包まれる。意義あり、反乱の芽は摘むべきだ、といった声が投げかけられるが新皇帝は動じない。 「してハッターよ、国を興して何になる。孤島の王となった所で、何ができると申すのか」  新皇帝の問いに青年は溌剌と答えた。 「弱き者、虐げられし者たちの国を作る――!」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!