見られた!

2/3
前へ
/3ページ
次へ
自惚れている事は百も承知で自分の事を言うけれど、文武両道に秀でていて家もそこそこお金持ち。 誰もが羨む様な、謂わば「完璧少女」である。 「完璧」と言うからには「容姿端麗」も含まれていると思われる…これは数値で表せない物だから、私の推測なんだけど。 下級生の女子達に「お姉様ー」等と黄色い声を上げられて天狗になっているのかもしれない。 皆には慕われている方だと思う…が、特に親友と呼べる友もできず、内心寂しいなー、とか思っていた。 そんな私の秘密の趣味。 それは…BL大好き、世に言う「腐女子」なのである。 今日も好きな作家の新刊が出る、という事でいそいそと本屋に向かう。 しかし、周囲の目を気にしてなるべく学校から離れた、同じ学校の生徒に出会わない様な離れた場所を選んで。 そうそう、これ。 これが読みたかったんだー。 本を手にウキウキとレジに向かおうと、くるりと後ろを振り向いた瞬間・・・・・。 私の手から本がぽろりと落ちた。 クラスメイトのあまり目立たない少女が立っていた。 「あ、あの、これは!姉に頼まれて…その…」 私に姉などいない。 「終わた」と思いきや、意に反して彼女は本を拾い私に手渡しながら、恥ずかしそうに 「私もその作家さん、好きなんですよね。あ、もちろんこれをネタに貴女を強迫なんか絶対にしませんから!」 手をバタバタ交差させ「違う、違う」のリアクション。 ん? よく考えたら、この作家を好き、というか知っているという事は…彼女も腐女子なのでは…? 私は思い切って言ってみた。 「趣味が同じなら…その…友達になってくれないかな?」 きょとんとする彼女。 「えええええ?私みたいにドン臭い私が、貴女みたいな人と、おと…お友達になるとか…え?え?え?」 今度は彼女が驚く番になった。 私は 「だって趣味が同じなんだもん!腐女子でオタクで…こんな趣味、人には言えなくて…だから寂しくて…」 すると、彼女は漸くぱああああっという明るい顔になって答えてくれた。 「…はい、喜んで」 やっとできた同志に 「じゃあ、これからは一緒に秘密のお話しましょ?」 と、悪戯っぽく人差し指を口に当てて 「しーっ」のポーズをとって。 それから私は、彼女と学校の屋上で一緒に昼食をとる様になった。 最初、皆は「え?この組み合わせ?」と驚いたみたいだけど。 そして、私と彼女はランチを楽しみつつ、今日も秘密の腐女子の会話に花を咲かせるのだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加