彼女

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その日は残暑が厳しい八月の一日だった。 私はクラブ活動の為に学校にいた。 聖リイナ女子高等学校。 創立から百年続く伝統ある女子校だ。 清楚でお淑やかなヤマトナデシコを育成する、というのがこの高校のアピールポイントらしく、普通の授業に加えて華道、茶道、礼儀作法の授業もあり、挨拶はごきげんよう、制服のスカートは膝丈にして着崩さないと、少々窮屈な校風である。 ちなみに校名のリイナとは、創立者リイナ・レベリトという英国人から取った名前だそうだ。 両親に「お淑やかな女性になってほしい」とこの高校を勧められて入学した私だが、ここ数ヶ月通っただけでこの学校の雰囲気に気疲れしていた。 堅苦しい学校生活を少しでも過ごしやすく、と剣道部に入部し、毎日のように竹刀を振っていた。 その日も朝から一日中クラブの練習があり、心地よい疲れのなかで廊下を歩いていた。 その時ふと旧校舎の存在を思い出した。 学校の敷地の端に、この学校の創立時に建てられたという旧校舎。 今では一階に図書室があるだけで使われてはおらず、時々掃除をする以外には入ったことがなかった。 今まで気にもとめなかった旧校舎に興味を抱いた私は、先生に見つからないようにこっそりと旧校舎へ向かった。
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