1人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、私は毎日のように旧校舎へと行った。
幽霊、と言われ少し怖い気もするが、何故だか幽霊の彼女、秘子に惹かれていた。
秘子は頭が良く、国語、数学、英語などなどどんな科目の問題もさらさらと解けてしまう。
また、旧校舎でずっと一人だったため、話し相手が欲しかったのだろう、私に色んなことを話してくれた。
旧校舎から見る夕陽は綺麗だとか、図書室の司書さんはその厳つい姿に似合わず小動物が好きだとか。
旧校舎の何処かのロッカーにミイラがあると真剣な眼差しで言うものだから、私は旧校舎のロッカーを全て調べることになった。
結局ミイラは見つからなかったけど、クスクスと笑う彼女を見るとこちらも可笑しくなって、二人で笑いあった。
そうして出会ってから一週間経った頃。
いつものように旧校舎でお喋りをしていた時、ふと疑問が浮かんだ。
「秘子さんは地縛霊ですか」
地縛霊、自分の死を受け入れられない人の霊が思入れのある場所に留まる、怨霊。
秘子は旧校舎から出ようとしない。
もしかして…と質問をしてみた。
「地縛霊、ね。もし私が地縛霊だったらどうするの?」
「成仏させます!」
いつまでも囚われているなんて、つらいに決まっている。
せっかく会えたんだから、私が成仏させてあげたい!
だが、私の折角の申し出はあっさり拒否された。
「私、まだ成仏出来ないわ」
「どうしてですか?」
私が聞くと、彼女は顔を伏せて言った。
「私…どうしてもしなければいけないことがあるから」
「それなら、私にも手伝わせてください!二人なら…」
「それは無理よ」
私の言葉を遮って言う。
なんで、と私が聞くより早く、彼女は言った。
「私には殺したい人がいるの」
最初のコメントを投稿しよう!