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「殺したい…人…」
「ええ、どうしても私が自分で殺したいの」
秘子は笑ったが、その眼は鋭く私を捉えた。
私は急に怖くなった。
目の前にいる幽霊がとても恐ろしい存在に思えたのだ。
そんな私の心を読んだように彼女は言った。
「私が怖い?恐ろしい?」
私はその問いに応えられずにいた。
暫くの沈黙。
ふと、秘子の眼差しが穏やかになり、私の手を握った。
「怖がらせてしまってごめんなさい。今の話は聞かなかったことにしてちょうだい」
そう言った彼女の表情は暗かった。
「そんなの無理です…」
私は彼女の手を握り返して言った。
「もし秘子さんに殺したい人がいて、実際に殺そうとしたら、私が止めます。絶対に」
絶対に、と強く言うと、秘子は微笑んで言った。
「じゃあ約束しましょう。貴女は私を止める。私は貴女を守る。良いかしら?」
「守る?何から私を守るんですか?」
彼女は優しい笑顔で言った。
「それも秘密。貴女には言わないわ」
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