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「ちょっと、待て。彩香の話を聞いていると、それって神隠しというか……行方不明になったってことだろ? だったら神隠しじゃなくて失踪事件じゃないのか?」
率直に思ったことを口にするが、とにかく最後まで聞けと念を押される。
次の行方不明者はルポライターの女性だ。
旅行者が失踪したことに興味を持ったその人は、旅行者と同じように神社の調査をしたらしい。
だが、その人も同じように調査後、行方不明になった。
しかしどちらも失踪する動機がないことから、警察は動いていない。
旅行中の女性は当然のこと、ルポライターの女性が勤めている会社の人も張り込みでもしているじゃないか、と達観している様子だ。
「なんでそこで行方不明なんだ? もしかしたら、別の場所へ移動しただけかもしれないじゃないか?」
「だから神隠しだって言ってるじゃない。全くもうーとにかく誰もどこに行ったのか知らないし、忽然と姿が消えたんだよ? これって、もう神隠しに間違いないでしょ!」
目を輝かせながら喋る彩香。本当にこの手の話が大好きなんだな。
「まぁ、なんていうかはさておき……そもそも、その情報をどこから聞いたんだ?」
「もちろん、あたしの大親友からに決まってるでしょ」
「…………」
呆れた。彩香の奴、また歩さんから話を聞いて、勝手に盛り上がってるな。
というか歩さんも警察官なんだから、ただの女子高生にそういう話をしないでもらいたい。
「あと歩さんが言ってたんだけど、警察側は今の時点だと事件かどうかもわからないから、全然調査していないんだって……別の事件の方を調査しててね」
「別の事件?」
俺からしたら警察を差し置いて、彩香が勝手に調査してる方が大事件だよ。
「ほら、昨日ホームルームで先生が言ってたでしょ? 1年生の女子が突然、糸みたいなものをかけられたって……」
「あー言ってたような気がするな。噂だと変質者の仕業じゃないかってやつだな。でも、それと行方不明事件とは全然関係ないだろう?」
「神隠しだって! まぁ、そうなんだけど……あたしの直感では関係してるような気がするんだよね。それに糸なんて……」
考え事を始める彩香。
その関係がありそうな気持ち、というか直感? 俺には全く理解できないぞ。
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