中の章

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…… ………… ……………… やっと休める。傷を癒せると思った。安心を得られる。 否、そうではなかった。ここも不安だ。こんなところ、苦痛しかない。 暗い。深い。上も下も何もない。ただただ広がる空間。闇。 歩く。いいや、動けない。それとも進むべき足がないのか。 それでも踏み出すのは勇気と聞いたことがある。違う、このまま動くのは無謀でしかない。 歯痒い。自らの意思で動けないのはどうしてこんなに、イライラするのだろう。 自分でも疑問に思う。なぜ、そう感じるのか。一体、なぜ。どうしてか。 答えは簡単。 満足していないから。現状に。そう、不満なんだ。足りない。全然足りない。 足りない? 何が? あぁ、それは簡単なことだ。どうしてこんなことに気づけなかったのか。 自由に動けない。それはこんなにも苦しいことなんだ。じゃあ、どうすればいい? 動けないなら、別に動くものを作ればいい。1つあればいい? 足りない。それじゃあ、2つ? 何か問題が発生したら、足りなくなってしまう。 それなら3つ。 うん、それなら大丈夫だ。保存もできるし、危険を回避することもできる。 仮に1つがなくなっても、何とかなる。 もう同じ過ちを繰り返さなくても済む。 ……お腹が空いた。ひもじい。 それなのに、つまらないルールがしがらみを生み出している。 目の前にご馳走があるのに、手を出せないもどかしさ。 つまらない。退屈だ。そう思って、本能に従い行動した結果例え様のない、快楽に溺れた。 しかし、それもすぐに終わりを告げる。 何も考えずただただ動き続けた結果、酷い痛みを与えられた。 その傷はまだ癒えない。 痛い、火で焼かれたような痛みがずっと続いている。 同じ過ちはもう繰り返さない。絶対に。 慎重に動く。そう決めた。次に遭遇したら、消されるかもしれない。 恐怖。嫌。嫌だ。それだけだは絶対に嫌だ。拒否、拒絶する。 そうならないためにするべきことは1つ、たった1つだけ。 安心を得るため。満足を得るため。幸せのため。自らの理想を実現するために――私は反撃する。 全力で動くために。確実に仕留めるために。 そのためには、この耐え難い空腹を満たさねば。 ……………… ………… ……
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