後の章

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青山先生に声をかけられ、周りを見渡すと教室にはクラスメイトがおり、既に朝のホームルームが始まっているようだった。 「あ、いえ……その、何でもありません」 恥ずかしい。どうやら、集中しすぎたようだ。無意味に注目されてしまった。 彩香が行方不明になった話をみんなにしたのかと思い、周りを見渡すが特に変わった様子はない。まだ発表する段階じゃないのか? それとも混乱させるのを避けるため意図的に言わないのか? 「あっ、そうだった。昨日話をした例の紐の件、みんな覚えているか?」 紐の件? なんだろう。 「センセー、それって糸のことッスかー?」 恭平がツッコミつつ、指摘をする。糸のことなら確か昨日、綾香も言っていたな。 「そうか、糸だったか。すまんすまん。それが昨日も被害にあった生徒がいてなーなんでも河川敷方面に向かって、蜘蛛の巣みたいな糸が大量に発見されたらしい」 蜘蛛? 春だから冬眠から出てきたのか? いや、待て。そもそも蜘蛛は冬眠なんかしないだろ。 「幸いにも大きな怪我とかなかったかもいいが、犯人はまだ捕まっていないらしい。変質者の仕業と思うから、みんなも注意してくれ」 警察に連絡はしておくから、と言い終えると、青山先生は教室から出て行った。 怖いやら、今日の帰りはどうしよう。などと女生徒から声があがる。 そんなことよりも俺は彩香の行方が気になる。すぐにも動きたいが、全然情報が足りない。 とにかくだ、お昼休憩になったら恭平や小林先輩に話を聞いてから考えよう。 それに歩さんにも話を聞かないといけない。あの人ならきっと協力してくれるはずだ。
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