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「……哉っ!」 しかし、最近は不景気やら何かで色々な店がオープンしては消えていく。 そんな話ばかり耳にするのだが、ここの商店街はそんな情勢とは無縁だ。 それはなぜかと言うと、ここの商店街で新しい店がオープンしたなら、俺が知らないはずはない。 「……ようー直哉」 季節限定も捨てがたいが、ここはやはり王道のものにしよう。その時の腹の減り具合で決める。 そろそろ全力で部活に参加して満腹を味わいたいんだけど、先輩の言うことには逆らえない。 何度も言うが、俺としては体調は万全だと思っている。 言っても信じてくれない、世知辛い世の中は辛いな。 「……はようー」 そうだな、今日の部活で先輩に明日は朝練に来てもいいか聞いてみよう。 それが上手くいったら、ふふふ。極限まで空腹になるぐらい動いて、最高の買い食いをしよう。 まず初めにカルピスウォーターで喉を潤し、ドーナツを食そう。 そしてメインバーガーに挑み、フィニッシュは当然、家での夜ご飯だ。 あ、その前にカキ氷を決めてもいいかも。 最近はパンナコッタという、聞いたこともないデザートが喫茶店に並び始めたみたいだし。 個人的にはクレープもいいと思うんだが、残念だけどここの商店街にそんなオシャレな店はないのだ。 「こら、直哉ー! 無視するなっ!」 バンッ! 「痛ってぇっ!」 俺の後頭部に何か硬いものがあたった。 「全く……人がわざわざ挨拶してるんだから。アンタもしっかり返事しなさいよねー」 そこには怒った顔の少女がいた。 どうやら、俺を殴ったのはその手に持っている通学鞄のようだ。まだ後頭部が痛い。
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