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『ごめんね…今ね、駅前で悠真に似た人を見かけて、それで…』
『あらら。もしかして見られちゃった?』
『え…?』
『でも大丈夫だよ。俺が一番好きなのは音羽だから』
いつものように甘く囁く悠真の声が電話越しに鼓膜に伝う。
言っている意味が全然分からなかった。
言い訳するわけでも謝るわけでもなく、開き直ったような悠真のその口振りに、私の頭の中はますます混乱していた。
『なに、言ってるの…?』
『あれ、予想外だな…電話、切らないんだ?音羽ってっ…、こういうの聞きたいタイプの女?』
握りしめた携帯の向こうから聞こえてくる少し乱れた悠真の息遣いと、押し殺したような小さな小さな喘ぎ声。
今、正に目の前のホテルの一室で行われているであろう行為が生々しく伝わってくるようだった。
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