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あっという間に春が過ぎ、夏が終わりを告げ、秋を迎えた頃。
恭弥から沙耶と付き合うことになったと聞いた。
詳しい経緯は知らない。
人の色恋沙汰に興味もないけど、沙耶の話をする恭弥はいつも嬉しそうで、俺が病院から遠ざかっている間に二人の絆が深まったのだと分かった。
全身全霊で尽くし、ありったけの愛情を注ぐ。
ありもしないと信じて疑わなかった永遠は、もしかしたらこの世に存在するのかもしれないと一途な恭弥を見ていて思った。
『良かったな。おめでとう』
報告を受けた際、そう口にした俺は心の底から祝福していたのだろうか。
大切な二人が幸せになったというのに、どういうわけだか嬉しい気持ちよりも胸の痛みの方が勝っていた。
纏まらない感情が複雑に絡み合い、頭の中でごちゃごちゃになって渦を巻く。
その結果、ますます沙耶との距離感が広がっていくのを感じていた。
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