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沙耶は時々病院からメールをくれた。
内容はテレビのことだったり、読んだ漫画のことだったり。
とにかくしょうもない、どうでもいいような内容ばかりで俺は気紛れで返信したりしなかったりを繰り返していた。
沙耶は長く生きられないと、須田さんは確かにそう言った。
でも、メールの文面を見ても深刻な様子は全く感じられなくて現実味がない。
あれから外泊どころか外出の許可すら一度も下りていないのが気掛かりだったのに、知らないフリをしなければならないのがもどかしかった。
そんな俺の気持ちを察したように“私は大丈夫だから心配しないで勉強とバイト頑張ってね”の一文で締めくくられるメールは一体どんな気持ちで送信していたのだろう。
大人になった今、画面の向こうにいる沙耶を想像してみる。
浮かんでくるのは悲しそうな顔で、誰にも本心を言えずに一人涙する沙耶の姿だ。
一つ言えることは、当時の沙耶の方が今の俺より何倍も大人だった。
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