愛、散る【暁side】

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今でも忘れない、沙耶と最後に話した18歳の誕生日。 数日前には施設で月に一度開かれる誕生日会が行われたが、物心ついた頃から自分の誕生月だけは参加しなくなった。 毎年12月24日か25日のどちらかに行われるクリスマス会もそう。 誕生日は人生が180度変わった日だ。 失うことを知り、悲しみを知り、絶望を知った日。 そんな日にお祭り騒ぎなんて冗談じゃない。 誰かと顔を合わせる度に笑顔で言われる“おめでとう”だって呪いの言葉にしか聞こえなくて少しも嬉しくなかった。 行事に参加せず部屋にこもっていても須田さんに引っ張り出されてしまう。 かと言ってバイトを入れたとしても、結局バイト先で祝われてしまう。 この日だけは静かに過ごしたくてコッソリ施設を抜け出した俺は、クリスマスムードなんか感じない公園のベンチで一人佇んでいた。 と、ポケットに入れていたスマホが震える。 もし須田さんや恭弥だったら無視しようと思ったが、表示された名前は意外にも沙耶だった。 いつもはメールなのに電話なんて珍しい。
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