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『いや…パーティーは中止になった』
『中止?なんで急に…』
『今朝、沙耶の容態が急変して…さっき息を引き取ったんだ。今から病院に来れるか?』
握り締めていた携帯が、ゴトッと床に落ちる。
目の前が真っ暗になった。
人は失ってから気付く生き物だ。
あの時ああしていれば良かったとか、もっと早くこうしていたら何か違っていたのかもしれないとか、巻き戻せない過去を悔いるのだって全部失ったあと。
あの夢は沙耶からのメッセージだったんだ。
私のことは忘れていいから、苦しまないでね。
多分、そう言いたかったんだと思う。
クラゲの最期のように海に溶けて消えることで、はじめから自分はこの世に存在しなかったとでも思い込ませたかったのだろう。
いくら形が消えても、心に刻まれた記憶は消せやしないのに。
残されたのは行き場のない想いと、後悔だけ。
謝ることも出来ず、傷を残したまま沙耶は逝ってしまった。
笑顔が思い出せないのは愚かな俺への天罰だ。
愛とは、儚く辛いものでしかない。
母親に捨てられた日から知っていたのに、どうして人を好きになってしまったんだろう。
こんなに苦しいのなら、無惨に散って行くのなら。
愛なんて知らない方が良かった。
もう誰も愛さない。
この日、絶望感に打ちひしがれながらそう誓ったはずだったのに…────
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