愛、葬る

6/20
前へ
/421ページ
次へ
「由希子さんは何にします?」 「そうねぇ、どれも美味しそうだけど…よし、ジェラートに決めた!」 「じゃあ私はアフォガードで。音羽は?」 「私は…」 いつもなら迷いなく大好物のティラミスを選ぶと思う。 でも、今は… 初めて会った日、彼は自分のティラミスを私に譲ってくれた。 美味しそうに食べてたからと、二回目に会ったときにはティラミスラテを買ってくれた。 彼と離れて強くなったつもりだったのに、まだまだダメらしい。 食べ物一つで次々と思い出がよみがえってしまう。 「…今日はパンナコッタにしようかな」 「オッケー。注文するね」 「ありがとう。ちょっとお手洗い行ってくる」 残りのパスタを掻き込んで、愛想笑いを崩さないように席を立つ。 他人に弱さを見せるのが苦手なのは相変わらずだ。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4295人が本棚に入れています
本棚に追加