愛、葬る

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「今日は誰と来てるの?」 「菫と由希子さんと三人で。由希子さんが昇進して、そのお祝いなんです」 「ああ、そういえば柏木さんがそんなこと言ってたな」 「そうなんですか?」 もしかしたら由希子さんは、私に気を遣って柏木さんの話題を出さないようにしてくれていたのかもしれない。 今でも二人が連絡を取り合っていたのは知らなかった。 「俺は会社の歓迎会なんだよね。今年は女子社員がたくさん入ってきたからお洒落なお店が良くて。でもここカップルばっかで嫌になるね」 「……」 「そうだ、今日は珍しくアキもいるよ。音羽ちゃん達どこの席?あとでアキ連れて…」 「いえ、いいです。お仕事の集まりなんだし、邪魔しちゃ悪いですから」 さっき笑顔の練習をしておいて正解だった。 狼狽えることなく、笑って交わすことができたから。 「そう?じゃあまた日を改めてみんなで飲もうよ」 「そうですね。菫にも伝えておきます」 果たすつもりのない約束をして、笑顔で手を振る柴崎さんに軽く会釈した。 再び歩みを進める私の足は少し震えていたけれど、周りは良いムードに包まれていて、私の無様な姿は視界の隅っこにも入っていないようだ。 あの対応は間違えてなかったはず。 今、彼に会うわけにはいかない。 顔を見たら一瞬で抑えていた気持ちが溢れ出しそうで、感情をコントロールできる自信がなかった。
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