愛、巡る

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「もう疲れた…全部忘れたいよ…」 酔ってない状態なら、今日会ったばかりの男に何言ってんだと思うのかもしれない。 だけど、今の私にとって彼は今日初めて会った人だからこそ… 恥を捨てて本音を言うことができるんだ。 「全部忘れればいい」 彼はこんなとんでもない状態の私を前にしても引く素振りもなく、嫌な顔一つしない。 それが…こんな私を受け入れてもらえたみたいに思えて嬉しかった。 『他の男に逃げるのもありだと思うよ』 頭に浮かぶ、菫から言われた言葉。 甘い呪縛から逃げられるのなら…それも悪くない。 「じゃあ…忘れさせてよ」 愛は巡るものだ。 一緒に笑い合った季節が巡り、 共に過ごした時代が巡り、 たった一人に捧げた想いだって巡る。 それなら…今ここで逃げたって同じこと。 彼の言葉を待ちながらフッと見上げた天井は、ゆらゆら揺れて見えたような気がしていた_____
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