4138人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
「もう疲れた…全部忘れたいよ…」
酔ってない状態なら、今日会ったばかりの男に何言ってんだと思うのかもしれない。
だけど、今の私にとって彼は今日初めて会った人だからこそ…
恥を捨てて本音を言うことができるんだ。
「全部忘れればいい」
彼はこんなとんでもない状態の私を前にしても引く素振りもなく、嫌な顔一つしない。
それが…こんな私を受け入れてもらえたみたいに思えて嬉しかった。
『他の男に逃げるのもありだと思うよ』
頭に浮かぶ、菫から言われた言葉。
甘い呪縛から逃げられるのなら…それも悪くない。
「じゃあ…忘れさせてよ」
愛は巡るものだ。
一緒に笑い合った季節が巡り、
共に過ごした時代が巡り、
たった一人に捧げた想いだって巡る。
それなら…今ここで逃げたって同じこと。
彼の言葉を待ちながらフッと見上げた天井は、ゆらゆら揺れて見えたような気がしていた_____
最初のコメントを投稿しよう!