愛、縋る

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駅までの道を、無心で歩く。 幸せそうなカップルを見るたびに、周りの景色が歪んで見えるのは…何故だろう。 私は自分のことを可哀想だとか惨めだとか。 そんなことは一度だって思ったことはないけれど、どこからか吹いてきた風が今日はやけに身にしみた気がした。 「寒…、」 進めていた歩みを止めるなり声と同時に口から出たのは白い吐息。それをボンヤリと眺めながら思う。 季節は秋から冬に変わろうとしているのに、私は何も変わらないままだ。 ううん、寧ろ…どんどん空っぽになってる。 「こんなはずじゃなかった、のにな…」 これは、悠真と会った日に必ず呟く常套句。 私の人生…本当にこんなはずじゃなかった。
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