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私にもこんな風に
手放しで笑っていた時期が有ったな。
ふと、あの頃の自分と石原さんが重なり、
妙に愛おしくなる。
残念だけど、
あの頃の私はもういない。
だって、隣に芳がいないから…。
「雅、大丈夫か?
お茶は俺が淹れるから、座ってろよ」
「えっ?!」
奇声を発した石原さんに視線を移すと、
彼女は光正への好意を隠しもせずに言う。
「番匠さんがお茶を淹れてくださると?
ああ、なんだか酷い1日だったけど
これで少しは気が晴れました。
ご褒美を有難うございます」
「石原、だからそういうのヤメろって」
「そういうのって、どういうのですか?」
「…お前、分かってて言ってるだろ?」
「だってもう仕事は終わってるし、
今はプライベートだから
番匠さんへの想いは隠したく無いです」
「いやいや、プライベートとは言え、
ここには同じ会社に勤務している
井崎さんや森嶋くんがいるワケだし。
…それ以前に俺がやり難くて困る」
この会話で、
思わず森嶋くんと以心伝心してしまう私。
そっか、
石原さんってイメージとは全然違うんだ。
清楚で物静かな女性だと
勝手に決めつけていたけれど、
実際は物凄く活発で積極的な女性らしい。
「俺、誰とも付き合う気は無いから」
「別に私、彼女じゃなくて大丈夫です。
愛人とかでも構いませんからっ!」
…どうやら未だ2人は、
付き合うまでには至っていないらしく。
そのことに何故かホッとしながらも、
今まで光正に言い寄って来た女性達と
石原さんとでは何かが違う気がしていた。
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