16.三人目のパートナー

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「ええっ?!焼身自殺?? 何だよソレ…怖っ」 森嶋くんが驚くのも当たり前だ。 石原さんの隣家が火事になった原因が 今、本人の口から明かされたのだが、 その内容が衝撃だった。 よくある失火などでは無く、 故意に火を点けたのだと。 それも、50代の主婦が自分自身に…。 言い難そうにポツリポツリと 石原さんは詳細を語り出す。 多分私が夫を亡くしたことを知っていて、 だからこそ自殺云々は喋り難いのだろう。 それでも森嶋くんが 『それで?』と先を促す為、 話すしかないのだが。 「…お隣りで暮らしていたのは、 50代の夫婦と一人娘の3人です。 旦那さんの方は技術職だとかで忙しく、 奥さんはずっと専業主婦だったんですね。 それで母親は次第に 娘ベッタリになってしまいまして。 休日は一緒にテニスしたり、 買い物やドライブといつでも一緒。 まるで親友みたいに仲の良い親子でした。 ところがその娘さんが数カ月前に結婚し、 お相手の転勤で遠方に引っ越したんです。 みるみるうちに衰弱し、 引き籠りがちになった母親は 近所でも評判になるほどで。 ウチの母も心配して声を掛けましたが、 頑なに拒絶されたと言っていました。 …長い伏線が有って、 その結果が本日の火事です。 >人は闇に心を引っ張られると、 >なかなか戻って来れないのよ。 って、ウチの母は泣いていました。 うわっ、なんか暗い話になって 申し訳ありません。 だからというワケでも無いのですが、 これでもう私も親離れしようかと。 家を建て直しても戻らずに ひとり暮らしをしようかな…なんて」
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