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フィードアウトした俺は仕込みが終わると買い物に出かけた。
そこで、見てしまった。
黒い犬。
鎖をジャラジャラ鳴らしながら自ら車に突っこむ姿を。
跳ねられた
車はそのまま止まらず通過した。
俺は駆け寄った
「大丈夫かっ!」
抱き上げる。
くぅ~んと鳴いて目が合い、目を閉じるとそのまま死んだ。
不憫に思い、稲荷神社に運んだ。
快諾され、犬の成仏を願った。
「あれは甲斐犬。頭のいい子なのになぜ、そのような事を。」
意味深に言う神主さん。
成仏を祈り深く考えないようにして、その場を去った。
18時。
向かいのお店のシャッターが閉まる。
もうそんな時間か。
帰宅の女子学生ラッシュで、てんてこまい。
ふっと視線を感じた。
シャッターの前にいつのまにか黒い半袖Tシャツに、ダメージジーンズの男の子がこっちを見ている。
不気味だなぁと思いつつ
「いらっしゃいませ~。」
営業を続ける俺だった。
店を閉める為に表に出る。
まだ少年がいる!こっち見てる!
シャッターを降ろすと無言で近づいてきた。
「おせんべい要るの?」
首を縦に振る少年。
「お金もってる?」
首を横に振る。
「じゃぁ、だめ。」
家に入ろうとすると腰に手を回された。
目が合った。
それは懇願。
清くん・・・約束守れなくてごめん。俺には無理だ。
「仕方のない子だねぇ。ちょっと待ってな。」
キツネ煎餅を5枚やる。
何度もペコペコ頭をさげて行ってしまった。
翌日19時
いつの間にか、また少年が向かいのシャッターの前にいる。
俺は知らんぷりをした。
21時
無言で寄ってくる。
「今日はお金ないと無理だぞ~?」
抱き着いてくる。
根負けして、また5枚煎餅をやる。
ペコペコ何度も下げられる頭。
清くん!と思わずにはいられない。
7日間それが続き、辻占の夢も見ず。
腰を掴まれる前に家に入った。
家に入ってこようと駆けてくる少年。
バシィィィィィィ!!
少年が倒れ込んだ。
なんだ今のは?
少年はあきらめず向かってくる。
その度に跳ね返される。
服をボロボロにしながら向かってくる。
扉に貼りつけていたはずの加冠と進禄が浮かび上り、入っては来させまいと結界を発動しているからだ。
「お前・・・人間じゃないのか?」
不憫に思い煎餅をまた5枚渡した。
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