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いつも人生の分岐点やピンチの時。必ず見る夢がある。
それは昭和だろうか。俺を昭三と呼び。相棒は田中清。
いつもキツネの煎餅と辻占を焼いている。作業衣だ。
休憩の時間になると2人の時間が訪れる。
自動的に進む夢。香盤に書かれた文字。京田昭三。
きっと俺の名前。いつもその板を裏返し、赤文字にする。
会話が始まる
「昭三、無理だ。やめとけ。」
「いや、開業届も出したし、備品買っちゃったし。」
自動的に流れる会話。
でも、どこか不思議。
俺は現在32歳
15歳の痩せた少年に戻る。鏡を見る機会があってゾッとした。
そのまんま自分の少年期の姿だったからだ。
「辻占、一本で食っていこうなんて無理だって。」
「生活できれば、それでいいかな。」
清は32歳の現代日本の俺のやろうとしていること、思っていることに助言をしてくる。
まるで、見ているように。
今日は暦を見る機会があった。昭和3年。
ここは・・・どこなのか。
「辻占って言ったって、もうフォーチュンクッキーがあるだろ?辻占って言ったて得体のしれない謎のお菓子さ。おみくじ入ってるけどな。」
俺は小学生のころから、この夢を見ている。清はなんでもお見通しで不思議だ。
調べたところ辻占を食べたアメリカ人がアメリカに持ち込み、華僑が食べ、それを真似て中華飯店に伝わった。その後、中国に伝わりフォーチュンクッキーとなった。
俺が調べられたのはここまで。
もちろん、夢に出てくるこの場所も調べた。
該当しそうなのが一件あったが、如何せん、京都の伏見稲荷。俺は東京だ。
「俺の病気、しってるだろ?雇ってくれる所もないし、自営業が一番なんだよ。」
「うつ病ってえのは大変だな。はい、辻占」
いつも自動的に話す会話。自分の気持ちを発せない。夢だから。
でも、会話は成り立つ。そして今後の指針の辻占を2つ必ず食わされる。
カリっ
『大凶 身内に不幸あり。』
「げっ。この店、大凶なんて入れてたっけ?」
「ほれ、もう一個。」
『中吉 用意周到に運べばよし』
「亡くなるなぁ。」
俺には母と姉がいる。
「それじゃ、またな。いってらっしゃい。」
俺はフィードアウトした。
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