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「また、辻占の夢か・・・。前世なのかなぁ。」
和室が2つ。リビング兼作業場。壁に穴を開け出窓にしカウンターを作った。
布団から起き上がる。
中村星斗。今の俺の名前。
東中野にある銀座商店街の一角を借りた。
ここには専門学校があり、通っていた。馴染みのある場所だ。
リビングで湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
「せいちゃーん。」
カウンターに後藤さん。総菜屋さんだ。
「後藤さん。」
「はい、お昼のお弁当っ!」
「いいんですか?甘えちゃって。」
「良く覚えてるもの。毎日、和惣菜の弁当を買いにくる子!」
「あはははは。健康にもいいですからね。それに、きんぴら。」
「今日もたっぷり入れといたからね~。」
「ありがとうございます。」
このきんぴら、後藤さんにしか出せない味である。
「看板、まだ出来ないの?」
「『いなりや』でシンプルなんですけどね。まだです。」
「催促した?」
「今日、電話してみます。」
「お、後藤ちゃん。」
「あら、斎藤さん。」
「せいちゃん、朝だぞ~、ほれ、豆乳。」
斎藤さん。お豆腐屋さんだ。
「本当に、みなさん、ありがたい。でも、大丈夫なんですか?」
「いいの、いいの、若い子が来てくれたんだもん!この商店街も栄えるといいわね。」
「ほんと、ほんと。まぁ、出世払いってこった。」
「どうも。」
「いなりやっつーと、コンコン様をお迎えしないとな。せいちゃん。」
「コンコン様?」
「お稲荷様。」
「この近場だと千葉の成田山新勝寺が有名ね。御朱印と、そうねぇ、置物で護ってもらうといいわ。景気ずけにウナギでも食べてらっしゃい。」
「はーい。」
俺は成田山に向かった。
ピリリリリっ
「もしもし?ねぇさん?どうした?」
『母さんが死んじゃった。』
「え?!」
『朝、起きてこないから様子を見にいったら、もう。低血糖で寝たまま逝っちゃった。』
「わ、わかった。」
『今、葬儀屋さん来て、葬儀は3日後だって。』
「わかった。場所、実家?」
『新横浜斎場』
「わかった。」
『忙しいだろうけど、家族葬だから必ず来てよ?』
「うん。行くよ。」
『身内に不幸あり』
また、辻占が当たった。
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