金蝉子

6/10
前へ
/216ページ
次へ
「こいっ!」 あ、声、近い 玄関から入ってきた。 小学校中学年とみられる。悟浄よりも大きく、悟空よりも小さい。 「万引き!カウンターにちゃんと鍵、かけとけよ。」 裸足。ボロボロの服。泥だらけ。 「とりあえず・・・清くん、お腹いっぱい食べた?」 「割と食ったけどまだいける。」 「その子とお風呂入ってきて?」 震える少年 「お腹空いてたの?大丈夫、怖くないよ?一緒にご飯食べようか?その為に、お風呂に入ってきてくれる?」 コクコク頷く少年。口がきけないのか? 「ほら。いくぞ。」 「清くん、その子の分の服借りるよー?」 「わかった。ほら、いくぞ。」 しばらくして 「昭三!」 清くんが飛び出してきた。 「はい!」 「虐待だ・・・痣だらけ・・・。」 「おおよそ、見当はついてたけど、やっぱりか。逃げ出さないように見張ってて。」 「うん!」 お風呂タイム 「八戒、どうするの?」 「こういう時はね、189に電話するの。」 189。全国24時間の児童相談所への虐待通報ダイヤル。 「すいません、うちの店の煎餅、万引きしようとして、捕まえたら裸足で。服もボロボロで。そうそう。で、ご飯誘って今、お風呂で家族が綺麗にしているんですが、痣だらけで・・・東中野の銀座商店街のいなりやです。家に帰したくないので・・・はい。」 通話を切る 「八戒、どうなるの?」 「今から児童相談所の人が来るよ。」 「あの子、どうなるの?」 「さぁ・・・。」 育児放棄のさとしくん 虐待をされてる名の知らない少年。 ひとまず、ごはんとたまごを用意した。 「綺麗になったぞー。」 「おっけー。君、名前は?」 怯える少年。 ゆっくり俺は動いて、そのまま優しく抱き着き、包み込んだ。 「怖くない、怖くないよ?大丈夫。大丈夫。お名前は?」 「あ・・・悪魔。」 「え?」 「目が真っ赤だから悪魔。」 とうとう悪魔が来たのか?! いや、問題がある。 悪魔ちゃん命名騒動があり不受理になった。 てことはこの子は? いや、年数が違う。でも悪魔って。 「そっか。悪魔くん、ごはんだよ。ゆっくりしっかり食べなさい。」 席に促す。 箸が使えない。 フォークにする。 「いいの?」 「うん。」 一心不乱に食べ始める 「火傷するってその速さと食べ方!」 聞こえてない。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加