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「こいっ!」
あ、声、近い
玄関から入ってきた。
小学校中学年とみられる。悟浄よりも大きく、悟空よりも小さい。
「万引き!カウンターにちゃんと鍵、かけとけよ。」
裸足。ボロボロの服。泥だらけ。
「とりあえず・・・清くん、お腹いっぱい食べた?」
「割と食ったけどまだいける。」
「その子とお風呂入ってきて?」
震える少年
「お腹空いてたの?大丈夫、怖くないよ?一緒にご飯食べようか?その為に、お風呂に入ってきてくれる?」
コクコク頷く少年。口がきけないのか?
「ほら。いくぞ。」
「清くん、その子の分の服借りるよー?」
「わかった。ほら、いくぞ。」
しばらくして
「昭三!」
清くんが飛び出してきた。
「はい!」
「虐待だ・・・痣だらけ・・・。」
「おおよそ、見当はついてたけど、やっぱりか。逃げ出さないように見張ってて。」
「うん!」
お風呂タイム
「八戒、どうするの?」
「こういう時はね、189に電話するの。」
189。全国24時間の児童相談所への虐待通報ダイヤル。
「すいません、うちの店の煎餅、万引きしようとして、捕まえたら裸足で。服もボロボロで。そうそう。で、ご飯誘って今、お風呂で家族が綺麗にしているんですが、痣だらけで・・・東中野の銀座商店街のいなりやです。家に帰したくないので・・・はい。」
通話を切る
「八戒、どうなるの?」
「今から児童相談所の人が来るよ。」
「あの子、どうなるの?」
「さぁ・・・。」
育児放棄のさとしくん
虐待をされてる名の知らない少年。
ひとまず、ごはんとたまごを用意した。
「綺麗になったぞー。」
「おっけー。君、名前は?」
怯える少年。
ゆっくり俺は動いて、そのまま優しく抱き着き、包み込んだ。
「怖くない、怖くないよ?大丈夫。大丈夫。お名前は?」
「あ・・・悪魔。」
「え?」
「目が真っ赤だから悪魔。」
とうとう悪魔が来たのか?!
いや、問題がある。
悪魔ちゃん命名騒動があり不受理になった。
てことはこの子は?
いや、年数が違う。でも悪魔って。
「そっか。悪魔くん、ごはんだよ。ゆっくりしっかり食べなさい。」
席に促す。
箸が使えない。
フォークにする。
「いいの?」
「うん。」
一心不乱に食べ始める
「火傷するってその速さと食べ方!」
聞こえてない。
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