夏休み

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へぇ~錫器の体験て都内でやってるんだ?でも薩摩まで行こうかな。あ、空席有り! 「二人とも明日暇?」 「部活だ。」 「俺も。」 「休んで。一緒においで。錫器の体験だ。」 「行く!」 流石、言いだしっぺ紅孩児。 「ただいまー!」 「おう!悟浄。明日、おでかけするよ?」 「分かった。」 『臨時休業』 江東区森下文化センター 「これから、何するんだ?」 「錫器でタンブラー作るんだ。」 「タンブラー?」 「何それ。」 「分からない。」 「ん~。酒器。」 「「「やる!」」」 良いお返事。 けど、呑ませないからな? 体験が始まった。 棒に板を巻き付ける。 難しい。 綺麗に曲がらない。 全員悪戦苦闘。 「酒器、酒器。」 飲む気満々だなー悟空。 「錫器で出来た酒器。絶対美味い。」 紅孩児まで。 「これ、どうしろっつーの?」 小1、手が小さい。 「ろう付けして完成です。」 職人にやってもらう。 「次、漏れたろうをこうやって、削って、あとはヤスリで磨く。皆さん、磨いて。」 タンブラーが完成した。 「これで酒が飲める!」 飲ますわけないだろ。 「錫器。少し重いがそれがいい。」 なんか思い入れでもあるんですかね?紅孩児さん。 それぞれ持って帰宅する。 「これ、誰のが誰のだか分からなくない?」 悟浄の発言ではっとする。 八 紅 浄 空 油性ペンで底に書いた。 錫器を冷蔵庫で冷やす。 冷えたオレンジジュースを入れる。 「うめー!」 「最高!」 「いきてるぅ~!」 紅孩児の自由研究は終わった。 次は漆器! 俺には漆器のこだわりがある。 「悟空、英語でチャイナの意味は?」 「中国、陶器。」 「紅孩児、英語でジャパンの意味は?」 「日本、漆器。」 「よくできました。輪島行くよ?」 「どこそこ?」 「石川県。」 地理のお勉強。地図を出す。 「ここ。」 「俺らがいるばしょは?」 「こっち。」 「随分遠いんだなぁ。」 「飛行機で1時間さ。」 「筋斗雲呼べば来そうだけど?」 「その提案は辞退しておく。」 見られたらどうすんだ! その夜、帳簿とにらえっこする。 仕入れ価格がこれで、売り上げが・・・。 俺だって32。漆器の世界には憧れがある。
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