辻占(つじうら)

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俺の身体を隅々まで八卦鏡というものでチェックしている神戸の道士様。 「何してるんですか?」 「うむ。三尸を探している。」 「三尸って頭と身体と足に住む虫ですか?庚申の日になると身体から出てきて神様に悪行を報告して寿命を減らすっていう。」 「良くしっているね。だが、考え方が違う。ほとんどの三尸はそうしているだろうよ。」 「どういうことでしょう?」 「混乱すると思うけど聞く?」 「興味深いです。」 「まず、寿命を減らす努力をするのは、三尸がもとは人間だったから。虫ではなく精霊。身体に抑え込まれ、自由がきかない。悪を重ねたんだ。だから自由の利かない罰を受けている。ここまで大丈夫か?」 「はい」 「寿命を減らして宿り主が死んでも自由にならない。そのまま無に帰る。人間として生まれ変わるかはわからない。」 「え?一生懸命やってるのに、それって酷くないですか?」 「悪行を重ねたのだから仕方のない事。それを、今、呼び出して説く。お前たちの住処は君の身体であって住処がなくなって困るのは自分たちだぞと気づかせる。ちなみに良い行いを報告すると宿り主の寿命は伸びると言われている。」 「へぇ~。」 「いた!まず、下尸!」 「痛いっ。何するんですか!」 「ごめんごめん。ちょっと仮止めしとかないとね。」 なんか足に大きな針が刺さってる!! 「中尸!」 「痛いっきもちわりっ。」 「ごめん。護符があれば身体にのせるだけで出てくるんだけど、今、ないから。よろしくね。」 「道士、買ってきましたよ~。キッチン借りるね~?」 「何、するの?」 「薄荷と桃のエキスを煮るの。」 しばらくすると、甘い桃の匂いと独特の薄荷の匂いがしてきた。 枕元に八角、桃ジュースが置かれる。 「上尸は額に縮こまっているな。孟居のせいだろう。まず、八角を飲むんだ。」 「ごふっ。」 「頑張れ。」 「次、この桃ジュース。」 「うげっ。何、この味。」 身体に異変が起きた。 「吐く!トイレ。」 「ここでいい。」 「道士様!うげぇっ。げぇつ。」 スッキリした。 「縛っ!」 「口からなんか出た!」 「落ち着け、孟居だ。」 「口から出てくるなんて・・・。」 「孟居、去ねっ!救急如律令、令!」 『ぎゃっ』 破裂した。 いつもぼーっとしている思考が定まってきた。 なんか、とんでもねぇな。この数日。
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