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その後、私は有村の行方を追って、方々走り回った。
そしてようやく、中庭のベンチに座っているのを発見した。
うしろ姿を見ただけで、私の鼓動は早まる。
「有村」
横から声をかけると、有村がびくっとしたのが分かった。
「隣に座っていい?」
有村が頷いたので、私は近づきすぎないよう距離を測りながら腰を下ろした。
「わりぃ、俺、みっともないな」
逃げ出したことを恥じているのか、有村は後ろめたそうな顔をしている。
「そんなことないよ」
そう、そんなことどうでもいいのだ。
ようやく有村がこっちを見てくれた。
それだけで私は息をすることも忘れそうなほど嬉しいのだから。
しばらく二人とも黙って、熱くも寒くもない心地よい風に当たっていた。
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