第十章 恋を売る店

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 高い木立に囲まれた長い石段を登って、境内にたどり着く。  こぢんまりとした、森の中の神社。  縁結びの神様なのか、カップルの願いごとを書いた絵馬がたくさんつるされていた。 「願いごとしないの?」  私が小銭を出して準備しているのに、有村はフラフラと歩き回っている。 「しないよ」 「なんで?」 「願いごとならもう叶ったから」  え?  それって、こうして私と一緒にいることだよね?  有村の甘い言葉に、私の心は一瞬でとろけてしまう。  なんでさらりとそんな可愛いこと言うのよ。どう考えても反則でしょう。
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