第十章 恋を売る店

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 先に好きになってくれたのは有村の方だが、このままだと、私の好きの方がどんどん大きくなって、あっという間に立場が逆転してしまいそうだ。  いや、もうすでにそうなっているのかもしれない。  結局、恋愛においても、私の方が一歩及ばないということか。 「ダーメ。叶った願いがこの先もずっと続くように祈らなきゃ」  有村の腕を取り、無理やり賽銭箱の前まで連れて来た。 「分かったよ」有村は渋々応じ、二人そろって柏手を打つ。  そろりと片目を開け、横で手を合わせている有村を覗き見た。  ああ、好きな人と気持ちが通じ合ってるって、なんて幸せなんだろう。  あんなに難しいと思っていた有村の心が、今はこの手の中にあるのだ。  私は再び両目を閉じ、この関係ができるだけ長く、できれば永遠に続きますようにと強く願った。 --- END
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