ちっさい怪談 20180703

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【野菜】  これもあれも全部野菜だから、だから私はヘルシーなの、いつかイケメンがあらわれて、素敵な結婚式をして、 相手を見返してやるんだから。  鼻息あらく、シーザーサラダ味のポテトチップスや、サラダせんべいをかじりながら、友人は宣言した。  あたしのブログも読んで、感想も聞かせてね。  中身はほとんど嘘だらけ、肌荒れしている胸元が、汚れたレンズで撮影されて、どんよりと濁っている。  現実が見えていないんだ、あたしがもう、いない人だということも。 【MAMA】  包丁とか握ったことないの、ママがケガするからだめって怒るのよ。  インスタントとコンビニ弁当ばかり食べている同僚が、太い指を膨れた頬にさして微笑む。  嘘つき。  誰ともしれない声が、ふたりの真ん中で聞こえて、昼休みは台無しになった。  泣き叫んでわめく同僚は、周りにあった書類やプリンタをなぎ倒したりして、事務所はひどい有様に。  犯人をくびにしてよ、あたしは悪くないもん、あたしはかわいいの、ママも言っているの。  同僚はたしか、母親と赤ん坊のころ死別したと本人からきいている。 【同窓会】  久々に会った同級生で、人一倍痩せている女性がいた。  指に、痛々しいタコみたいな赤黒いできものが、痛そうに腫れている。  あの子……だれ?  ざわざわして、騒ぐ同級生たちを前に彼女はケタケタと嗤って、会場を出て行った。  ビュッフェ形式で並んだ料理の、パセリだけが消えていた。  後日、クラスの誰だったかがわかったそうだが、既に鬼籍のひとだという。
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