第2章

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季節は梅雨から夏を迎えようとしていた。 オフィスの外にでたら、蒸し暑く湿気が肌にまとわりつく。 昼間の汗ばむような陽気とは違い、夜は蒸しばむ暑さだ。 蘭のようにまっすぐ帰るのもいいが、空腹だし、蒸し暑いし1週間のご褒美として気分転換に帰りにBARに寄ることにした。 博多駅近くのBARでシックなレンガ造りで、小さな看板だけがあるひっそりとたたずんでいる。いわゆる隠れ家的な作りで、私のお気に入りのBARだ。 間接照明で落ち着いた雰囲気で、カウンターとテーブル席が4つの小さな作りのお店だ。 クラシカルなジャズが流れていて、落ち着いて飲めるBARの雰囲気が私は好きだ。 初老のマスターが「あ、櫻井さん、いらっしゃいませ、こんばんわ」と出迎えてくれた。 「こんばんわ、マスター」といってカウンター席に座った。 ここの看板メニューの明太子のクリームパスタが大好きなので、 「マスター、明太子のクリームパスタをお願いします」と注文した。 ここのBARのメニューはいつ見てもカクテルの種類が豊富なので、全く飲んだことのない アイオプナーを今日は頼んだ。 すると、マスターが「櫻井さん、アイオプナーは運命の出会いって意味があるんだよ」っと教えてくれた。 そういえば花言葉同様に、カクテルにも意味があると聞いたことがあったのを思い出した。 「マスター、私にはそんな出会いは一生来ませんよ」と答えたら、 「そんなことはないよ。櫻井さんは魅力的だよ。見つけてくれる人が、まだ櫻井さんには見えてないだけですぐ近くにいるかもしれないものだよ」と励ます言葉をいってくれた。 そんな人がいたらとっくに現れてるよ……と思ったら、お店のドアがゆっくりと開いた。
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