安楽椅子探偵を知っているか?

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 今日も今日とて俺は椅子に深く腰掛け、足を組み、くつろいで読書に勤しむ。ふと遠くから運動部の掛け声が聞こえる。  前日は雨だったため、開け放った窓から涼しい風が吹いている。なるほど絶好の部活日和といったところらしい。また先日まで中間試験で、どの部活動も行われていなかったせいか、より一層練習に気合いが入っているようだ。  何となくグラウンドの方へ目をやって、また手元の文庫本に目を落とす。生徒会室のガラス窓からは西日が入ってきて、照らされる手元は暖かい。 「秀太朗、この前は助かったよ。」  生徒用の机に座る自分からみて左奥のデスクには、わが校の誉れ高き生徒会長である堂本昴が、キャスター付の椅子と共に回転しながら先ほど印刷した資料に目を通している。スカートとひとつに束ねた長い髪がプロペラみたいに回っている。 「丸く収まってよかったな。だが昴、会話するときは相手の目を見て話そうな」  時折翻るスカートに目がいかないよう、手元の文庫本を見つめたまま答える。 「お互い様だね」  昴は見透かしたように悪戯っぽく答える。 「そうだな」    こいつ、分かっててやってるだろ。花の女子高生なら恥じらいをもってほしいものだな。  そもそも、揺れるスカートの裾に目がいくのは健全な男子高校生としては当然のことで、スカートのチラリズムがだな…と哲学的脳内思想言語化(妄想)を繰り広げ、軽くセルフバッドトリップをしている俺を見かねてか、助け船が出される。 「そこの変態は置いておいて、テスト期間中になにかトラブルでも?」  今度は、向かい合わせた机を挟んで正面の彼女、書記の青井佳花が 聞いてくる 。違った、助け船じゃなかった。ただの変態認定だった。
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