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「佳花には言ってなかったっけ?中間テスト不正行為事件。」
「カンニングでも行われたんですか?」
彼女はこちらの話題が気になったようで、先程まで取り組んでいた数学の課題の手を止め、会話に入ってくる。
「ただのカンニングじゃない。あれは正に完全犯罪ね」
「適当言わんでくれ。だいたいカンニングは犯罪じゃねぇ」
「あれほど頑張りをただのカンニングなんて呼ばれちゃ田中くんも佐藤くんも報われないでしょう。」
「木本と上村だよ。早速、報われてないじゃねぇか。」
たかが数日前のことだと言うのに名前も忘れられてるとは。
「2年生の男子生徒ですよね、彼らがカンニングを?」
「そうそう物理と数学のテストで。て言っても物理は未遂で済んだんだけどね。」
「物理と数学ですか?物理も数学も6割方記述問題だったようですけど。どちらも同じ手段でカンニングが行われたんですか?」
彼女の方も本格的に興味が湧いたのか、机に広げていたノートや参考書を鞄に片付け始める。
「いい質問ですねぇ」
恐らく、とてつもなく精度の低い池上彰の物真似だろう。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
ともあれ昴のほうは話に興味を持たれたのが嬉しかったのか、上機嫌で話し出す。
「まぁ折角だから事の発端から話をしてあげるわ。あれは私が陽気に鼻唄を廊下を歩いているときだった…」
昴の話を聞くついでに俺も、手元の文庫本を広げたまま数日前の出来事を思い返した。
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