プロローグ

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――卵が先か鶏が先か――  そんなジレンマを表した言葉がある。  俺の名前は有須啓太という。  当たり前のようにみんな俺をアリスと呼ぶ。当然のことだ。なぜってそれが俺の苗字だから。  ただイントネーションの問題。山なり最後の音を低く下げるか。一定音で呼ぶか。  小学生の時だった。  クラスの女子が「アリスくんて可愛い」なんて言ってきて俺は子供ながらに照れた。でもよくよく聞けば女子が言っていたのはどうやら俺の名前のことだったらしい。 『不思議の国のアリス』青のドレスにリボン。白いエプロンの少女が主人公の冒険ファンタジー。  名前だけは聞いたことがあったけど、実際どんな物語なのか読んだことも、映画、アニメ化されてる物も見たことがなかった。  でも、改めてその話題を提示されると妙に気になる。些細なきっかけから俺は『不思議の国のアリス』に興味を持ち、手軽なところでアニメ映画から観ることにした。スピード感やユーモア、なかなか楽しめた。でも結局なんだったの? と思い今度は本で読むことにした。  映画同様、印象的なシーンが次から次へと現れる。飽きさせないけど、ハチャメチャさが俺には良くわからなかった。めちゃくちゃなことを自分ルールでそれらしく論ずる不思議の国の住人達。彼らが何をいいたいのかどう考えても意味が解らない。そんな意味不明な物語だったけど、何故かな? 嫌いにはなれなかったんだ。
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