8:Time to think

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8:Time to think

 その後、各売り場を回って様々な雑務をこなしているうちに、あっという間に昼休憩の時間になった。顕子はいったん業務を切り上げて10階の社員食堂に向かった。空腹のせいか、満員のエレベーターの中で思わず大あくびをしてしまう。 (今日の日替わり、何があるかなあ……昨日の蒸し鶏、おいしかったな)  お腹が空くと眠気に負けてしまいがちな顕子は、ぼんやりしながら前日に食べた料理を思い出していた。というのも、社員食堂の肉料理は顕子が食べたどの外食よりも絶品で、品数は少なくとも手ごろな値段で食べられるのである。これを楽しみに仕事をしているといっても過言ではない。顕子でなくとも、化けるという超常の力を使い続ける妖怪たちには、エネルギーを補う肉をおいしく食べられることが何よりも大事なことだ。  エレベーターが開くと、すぐ目の前に食品サンプルが並んだケースが置いてある。うどん、そば、カレーに親子丼、生姜焼き定食など――定番メニューはもちろんのこと、日替わりメニューまで毎回サンプルを組んで設置してあり、それを確かめるのが昼休憩最初のお楽しみだ。     
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