8:Time to think

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(さてと、今日は……鶏唐揚げ定食と尾道風ラーメンか。うーん、気分じゃないなあ。親子丼にしよう)  サンプル棚に隣接された自販機で食券を買い、厨房スタッフのハクビシンに渡して出来上がるのを待つ。さすがに衛生基準もあってか、調理している者は白衣に手袋、帽子までしっかり着込んで、抜け毛などが入らないようルールを厳しく守っているようだ。  待ち列に並んでいると、顕子のちょうどすぐ後ろに見知った顔が現れた。  羽佐間枸橘だ。細身のわりに結構食べるのか、定食用の大きな盆を抱えている。顕子の見分けはまだ種族単位でしかつかないが、毎日顔を合わせる枸橘ぐらいなら何とか分かるぐらいにはなった。  彼は顕子に気づくと、一応の礼儀というように彼女へ声をかける。 「ん、お疲れ。内勤は慣れてきたか? 百貨店全体の仕事が見えてきたんじゃないか」 「大体の流れは。でも、やっぱりまだ新人なんだなあって……できないことばっかりで、逐一確認してもらわないと」 「早いうちに仲良くなっておくのが吉だね。外商の依頼は他の部署からすると無茶な要求だと思われる」 「そうですね……100個とかの大口の包装、わたしもあまりやりたくないですし」     
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