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と、そこに、彼女の横から知った声がかかる。
「ちょいと、邪魔するよ」
ドカンと顕子の隣に置かれたのは、ことごとく大盛りに増量された唐揚げ定食の盆。枸橘の三倍くらいはあり、皿から山と積まれた唐揚げが一つ転げ落ちた。
「どうしたい、そんなしけた面して。うちの食堂がまずいってんなら、そいつは大問題だね」
「あ、社長……お疲れ様です」
顕子の隣に座ったのは社長のあいだった。おおよそ社長らしくない、土建現場で使う上下のつなぎを着て、全体が煙をかぶったように白く汚れている。
「で、どうなんだい。また枸橘から逐一小言でも言われたのかい」
「僕を小姑みたいに言わないでもらえますかね。それと、今回は食に関する僕の見解を伝えただけですよ」
からかうようなあいの言い口に枸橘がむっとする。あいは社長とはいえ従業員とはざっくばらんに言葉を交わし、特にこの食堂内では上下関係を無いものとして積極的に話しかけるのだ。
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