1:ひとりぼっちはやめた

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 人間かどうか、という判断は微妙だ。蝶柄の着物を着ているし、スマートフォンを使って通話もしている。そもそも人間の背格好と同じで、普通に椅子に座っている。 「ええ、ええ……今、彼女が起きたみたい。それじゃあよろしくねえ」  化け猫。猫叉。目の前のものを端的に言い表せる単語を、顕子が記憶の隅から引っ張り出せたときには、その化け猫? は顕子の部屋へ向かい始めていた。  こんなときどうしたらいいのか。数秒間おろおろした末に、顕子がとった選択肢はベッドで寝たふりを決め込む、だった。  もし話しかけられても『猫』には触れず、ひたすら感謝の意を伝えて何もなかったように帰ってもらう――それが顕子なりに考えた、これ以上『非現実』の世界に足を踏み入れないための防衛策だった。  やがて、がちゃり、と顕子の部屋のドアが開けられた。 「気分はどうかしら? 足の引っ掻いた痕は痛くない? ごめんなさいねえ、つい爪を立てちゃって。あなたが落ちないよう力を入れたせいね。よく効く軟膏を塗っておいたから傷跡は残らないと思うけれど……」  化け猫が顕子の部屋に入ってくる。顕子のことがよっぽど心配だったようで、けがをさせたことを申し訳なさそうにしている。  人懐っこそうに話す化け猫は、まるでどこかのキャラ着ぐるみのようで、顕子には恐怖どころか親近感を与えた。     
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