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「本来嫁入り道具は婚礼後の生活に必要な物を揃える習慣ですから、現代の生活に合わせるのも選択肢の一つです。お嬢様や相手様とよくご相談のうえで決めるのがよろしいかと」
「ふうむ、ではそうしようか。他に良いものがあれば資料を送ってもらえるかな、娘にも見せてみよう」
「ありがとうございます。後日改めてお送りしますね」
顕子の説明を聞いて、一朗は座卓の上の資料にもう一度目を通す。何を選ぶのかしばし熟考しているようだ。そしてその途中で、何度かネックレスの方に視線が向く。
どれを選ぶにせよ、これで彼の中で「買わない」という選択はかなり順位が下がっている。今回の営業はほぼ成功と言えるだろう。
(よかった、噛まずに言えた!)
自分の口から説明できたこと。それが今の顕子にとって一番の達成感だ。ここから先はまた枸橘の番だが、商材の扱いをほんの少しでも任せてもらえたのが嬉しかった。
適当なタイミングを見計らって、枸橘がセールストークの締めに入る。
「まだ日もありますし、選んだものに皆様が納得されることが一番大事です。何よりも、婚礼後には顔を合わせる機会もぐんと減りますから、腹を割って話せる最後の時間かもしれません」
「……確かにな」
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