7:We Are Confidenceman

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 しかし、そういう時に限って予期せぬ客が来るのもまた商売だ。案の定、矢継ぎ早に次のお客さんがやってきた。 「あの、ちょっとお尋ねしたいのですが、いいですか?」  やってきたのは人間の高齢女性で、足腰が悪いのか杖をついて歩いている。これから法事でもあるのか全身黒の喪服を着ていた。 「あ、はい! お伺いします」  一応返事はしたものの、顕子は手助けを求めてあたりを見回した。しかし手が空いているものはおらず、今対応できるのは顕子だけだ。 (どうしよう、お酒のことは全然だし……とりあえず、話だけでも聞いてあげよう)  お客様が何を探しているのか、何を求めているのか。それを探り当てるのが百貨店に勤める者の使命。この一ヵ月枸橘の接客を間近で見てきたのだから、初歩的なところまでは何とかできるはず。そう自分に言い聞かせ、顕子は女性客の相手をすることにした。 「すみません、担当の者が出払ってまして……お伺いするだけでもよろしいですか」 「あら、そうなの……いえね、今日主人の四十九日なんだけどねえ、整理をしてたらこれが出てきて」  喪服の女性が財布から出したのは、稲荷百貨店で使う商品予約表の控えだった。四つに折りたたんであるが、一度くしゃくしゃになったらしく全体に皴目がついていた。顕子はそれを受け取って内容を検める。     
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