7:We Are Confidenceman

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 商品自体はどこでも売っているようなそこそこの値段のウィスキーが一本。受付の日付は三月となっている。しかし、書かれている名前は―― 「これは……ご主人様のものですか? 結構前にお取り置きされていて、引き取りに来られる前に、その……お亡くなりに」  顕子の言葉に女性はうなずいた。お供え物や香典返しなど、『葬』に携わることの多い百貨店では避けられないとはいえ、『死』に関わる言葉を口にすることを顕子はためらった。   当たり前のことだが、今日もどこかで誰かが死を迎え、葬儀に必要なものを稲荷百貨店へ求めに来る。今までの生活以上に死を意識する瞬間が増えているのだ。 (早く慣れなきゃなあ……身も蓋もない話、法事関係だと大口注文も取れるし)  少し思考が横道に逸れた顕子をよそに、女性は亡き夫の話を続ける。 「若いころから酒っていうといつもこれでねえ、ほら、ニュースでやってましたでしょ、いっぱい売れすぎてしばらく造れないって」 「ああ、そういえば……」     
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