稲荷百貨店外商部 ～お客様は神様、狐様、魔物様！？～

１：ひとりぼっちはやめた

「書類選考の結果について」

この度は弊社の求人に応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、残

　上原顕子にとって、これ以上の文字は無意味であり、携帯電話の通信量を無駄に消費するだけだった。「お祈りします」などという心無い言葉を並べるくらいなら、いっそ昔の電報のように「フサイヨウ」の五文字で済ませばいいのに。そんな苛立ちを覚えるほど、彼女は追い詰められていた。
「はいはい、どうせ私みたいな人間は必要とされないんだ……」
　ふと漏らした呟きが、誰もいないマンションロビーに虚しく響く。
　三月の昼下がり、無難な黒いスーツを着た暗い顔の自分は、このマンションの住人にどう見えているのだろうか。
　あの子はまだ仕事が見つからないの？　大学で一体何してきたのかねえ……？
　こんな早い時間に帰ってくるところを見られたら、きっと陰でこんな噂が立つに違いない。顕子は誰にも出会いませんようにと祈りながら、まっすぐエレベーター前に急いだ。カツカツとなるヒールの足音さえ、顕子の自己嫌悪を一層増長させるものになっていた。
　降りてくるエレベーターを待つ時間がとても長い。早く、早くと気持ちがやけに逸る。