4:Beyond the Beyond

1/8
838人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ

4:Beyond the Beyond

 空が、一面毒々しい蒼に覆われていた。  つい先ほどまで、扉の反対側にいたときは真昼の高い太陽が見えていたにもかかわらず。  木々を揺らしていた強いビル風も、今は葉擦れすら聞こえないほどにぴたりと空気が止まっていた。暖かさも冷たさも、木々の生命の気配さえも、何も感じられない。  稲荷百貨店の屋上、社の本殿に当たるこの区域だけ、他とは全く異なる時が流れていた。  限り無く死に近い静寂。昼も夜もない、魔が満ちる黄昏時。神様の居所にするにはあまりにも不釣り合いな空間だった。  驚きはしなかったが、顕子が想像していた雰囲気とは真逆だ。彼女は神々しい光に満ち溢れた神域を考えていたのだが、ここには神の威光の片鱗も見い出せない。  そして、あいの肩越しに本殿らしき建物が見えた。おおよそ神社らしくない現代的なデザインの木造平屋だ。学校の教室ぐらいの大きさだろう、小さい窓が一つあるだけの、シンプルな四角い形。だが四隅に当たる部分は丸い大きな柱があててあり、壁全体は板張りで包まれている。それらの木材はつい最近建てたばかりのように真新しい褐色をしていた。      
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!