相乗りエレベーター

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 四階でエレベーターが止まり、開いた扉の向こうにいつもの人が現れる。けれど乗って来るなりその人は私の腕を引っ張り、エレベーターの外へ私を押し出した。  振り返った時、すでに扉は閉まり、エレベーターは上昇を始めていた。  どうして私が外へ出されたのだろう。何か仕返しをするなら、それは同僚にするべきではないのだろうか。  あまりの理不尽さに、戸惑いつつもじわじわ怒りが込み上げてくる。けれどそんな私の意識は直後の出来事で一変した。  移動していたランプ九階で止まる。その途端明かりが消え、閉ざされたエレベーターの扉越しに、何かが落ちていく気配と絶叫が伝わった。  誰かが通報したらしく、程なくパトカーや救急車などがビルに駆けつけてきたけれど、エレベーターに乗っていた同僚は、九階の高さから地下まで落ちて即死だったらしい。ただ不思議なことに、エレベーター内にいたのは同僚だけで、他に乗り合わせていた人はいなかったという。  私は知っている。あの時エレベーターには二人の人間がいた。そして私が無理に降ろされた後、エレベーターはどこの階にも止まらなかった。  なのに転落したエレベーター内には同僚しかいなかった。  いつも四階から乗り込んできていたあの人は何ものだったのか。  この事件以降、二度と乗り合わせなくなったいつもの人。その正体もあの後エレベーター内で何があったのかも、私はいまだに知らないままだ。 相乗りエレベーター…完
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!