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光が過ぎ去って私は神社の境内に佇んでいた。
境内の中央にはヤツハが横たわっている。
「ヤツハ!!」
私は彼に駆け寄った。
途中地面へつまずきそうになる、バランスを崩して手のひらをついて、皮が擦り剥けた。
手から血が零れたけど、だけどそんな些細な痛みなどどうでもよかった。
「ヤツハ!」
私は彼の名を呼ぶ。
「お願い、ヤツハ。目を開けてよ」
ヤツハは何も喋らない。目も口も閉ざしたままで顔色は真っ白で触れた身体は冷たくて。
その冷たさは雪のそれに似ていて。
亡くした二人のそれそのものだった。
「ねぇ、お願い、いやだよヤツハ」
私の声が空に溶ける
「私やっと分かったのに。お願いなんて、私にはヤツハがいれば……それで、良かったって分かったのに……どうして」
どうしていつも私は気付くのがこんなに遅れてしまうのだろうか。
失って分かる悲しみなんてもう。
「耐えられないよ、ヤツハ」
私は彼の身体を強く抱き寄せた。
少しでも私の体温が彼に注ぐならいいと。
私の命なんて全部あげても良いから。彼が生きていればそれだけでいいのに。
どうして。
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