変身の末

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 粗末な記憶における学識のひとつとして覚えている手続き記憶等は問題ないのかもしれないが、そんなものはこれくらいの年齢になっていれば殆どを習得しているだろうから、あまり現在の状況とは関係があるとも思えない。  対人といえば人間が生きていくうえで最上に重要な記憶である。それこそあらゆる物事よりも脳に対してより深く記憶されていそうなものであるが、現状、思い浮かばないのであるから仕方がない。  どちらにせよ、この身体の年齢までに起きた対人の記憶は思い出せるのだから問題はないのかもしれない。  母親のことも覚えているし、友人関係やクラスに関することもわかる。わからないのはここからの未来に対する記憶であり、そこの中において主に対人に関するものだ。    なんとなく大学に籍を置いていたのではないかという予感などが先ほどから浮かんでくるのは失った記憶の染みであるのかもわからない。  本などから得た知識等は脳に入っている。これは先ほど言った通りである。  私は記憶の天才ではなかったからところどころ抜け落ちた毛のように忘れたものも膨大にあるのだが、それはどうしようもないことだ。  それにしても対人及び未来の記憶が抜け落ちるというのは一種のペナルティであろうか?    どうして私は未来からやってきたという確信のみをこんなにも持ち合わせているのか。これでは精神年齢のみが発達した、知識が現時点で豊富な少年に過ぎない。  神による時間逆行を成し遂げた私への罰であろうか。  ……いや、ありえない。
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